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『あのワニ』について

今日は、尾てい骨骨折編の第2回を投稿するつもりだったんですが、急遽変更して『100日後に死ぬワニ』(以下『ワニ』)の話について書きます。

結末について

私は、話自体はとてもいい話だと思います。
ある日突然『日常』が終わってしまう。という風にまとめてしまえば陳腐な展開ですが、その日常に対して『死』へのカウントダウンが続くというシュールさ。
かつ、恐ろしい。シチュエーションは違えど、誰にでもありえそうな『交通事故』という結末。
もちろん、各登場人物(動物)たちにはそれぞれ多かれ少なかれ言いたいことはありますが、それはメインではないので。

ワニを見つめていた人々

本題はこっちですね。
ワニが死ぬ、という結論だけが与えられた物語に対して、たくさんの人が注目したわけです。
ワニに共感する人、死因を予想する人、コンセプトに首をひねる人。いろんな立場の人が注目しました。
中には、99日目という盛り上がってきたタイミングでの書籍化発表に対して、苦言を漏らす人もいました。無料で見られるウェブ作品を書籍化することに「金儲けのためか!」という人もいました(これに対しては、「書き手にもご飯食べさせてください」としか言えない)
結果、ツイッタートレンドは見事に制圧。何故かワニワニパニックまでトレンド入りするというカオス。

その上で、あの発表が行われたわけです。

 

問題点1:ステマ疑惑

100日目の投稿から程なく、いくつかの発表が行われました。
中でも話題になったのが、『いきものがかり』新曲とのコラボPVです。このスタッフをよく見ると、電通社の関係者の名前がチラホラ。
つまり、このブーム自体が広告代理店によるステルスマーケティングステマ)だったのではないか、という話です。

そもそも『ワニ』は、ツイッターで投稿されていた漫画です。

  • 投稿されていた漫画を見た企業が、ブームを察知して接触・企画・各社が急いで動いてキャラクター商品化
  • 最初から企画が動いており、その為に連載されたのがツイッターの『ワニ』

これ、どちらともとれるんですよね。

前者ならまだいいんですよ。
100日目に間に合わせるようにすげえ頑張った人たちがいるんだなー、って感動すら覚える。

でも、後者だとステマに該当します。
ステマによる騒動は、少し前にも「アナ雪2PR騒動」もありましたが、基本的に『違法でないからと言って、やっていいことじゃない』の一言に付きます。


問題点2:感動ブレイク

ワニの死に対しては、いろんな人がいろんな感想を持ちました。
(読者には予告されていたものとはいえ)あまりにも突然すぎる死。交通事故。誰にでも起こりうる、身近な死。
陳腐かつ端的な表現をすれば、多くの人が『感動』したわけです。
それを、その『感動』が最高潮まで高まったタイミングで、各種展開が発表。さらには追悼グッズもたくさん。

………白ける人が続出したわけですよ。
そりゃそうです。タイミングがあまりにも悪すぎた。
で、前述の電通の件もあり、一気に人が離れました。呆れかえった人たちが言及し、またツイッタートレンドに乗りました。

この、下手を打ったかのようなマーケティングには、懐疑的な人も多くいます。
中には、「ツイッターで見ていて白けた人たちは、最初から商売の対象外」と言う人もいます。そういう人は大してお金も落としてくれないだろうし、ここでバッサリふるいにかける。
それよりも、『話題の作品』が見たい人を一人でも多く集めるほうが売れる。そういう判断の可能性もあります。
『書籍化以前にツイッターで見ていた人』をすべてふるいにかけた、大胆すぎるマーケティングである可能性すらあります。

要するに、「多くの人が疑心暗鬼に陥った」わけです。

『ワニ』のこれから

『ワニ』はおそらく、このあと大きく成長し、人気キャラになるでしょう。
ツイッターでの一連の流れは、現代マーケティングのモデルとして、とても優秀なものになったと思います。

でもその一方で、多くの疑問を持つ人々を産んでしまったことも事実です。
作者や『いきものがかり』に対しても、色々思うところができてしまった人もいるでしょう。

私自身の思うところを言えば、「壮大な社会実験であり、現代ネット社会における作品の布教の怖さを思い知らされた」という感じです。
私のような駆け出しライターには、まだウリもないのでどうこう言えないのですが、人気を出すためには努力が必要ですし、『時間』か『人手』のいずれかもしくはすべてが必要です。
いい作品でも見てもらえなければ意味がありませんが、そのためにはコストが発生します。ご飯食べないといけないんです。そのためには、広告活動が必要です。

広告活動のやり方、タイミング、ターゲット選定、その他。
今回の件は、それらの複合体が形を持って現出してしまった。そんな印象を受けるのです。

話は変わりますが

ところで。
『ワニ』は、死が身近に迫ってきていることを知ることもないワニが日常を満喫し、しかしそれでも死は訪れてしまう。という話です。
いわば、死のエンターテイメントです。

私の好きな漫画で、作者自ら「死は笑い」と言い切っている作品があるんですよ。

本筋は極めて真面目です。
メインテーマである『愛』に対して極めて真摯に向き合っておきながらも、同時にもう一つのテーマである『因果応報(本来の意味なので善にも悪にも)』にも非常に忠実です。
泣きたいほどに。泣いた。

『ラブデスター』って作品なんですけどね。

 

ラブデスター 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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ラブデスター コミック 1-3巻セット (ジャンプコミックス)

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  • 作者:榊 健滋
  • 発売日: 2015/12/04
  • メディア: コミック
 

 

はい、ツッコミたい人は数行読み返してね。嘘は言ってないよ。
主人公サイドはともかくとして、トンチキ行動に出る登場人物たち(ファンからは『怪人』と呼ばれている)のトンチキな言動を、ゲラゲラと笑いながら楽しむ。
そんなトンチキな人たちの死はまさにエンタメであり、作者の言うように『笑い』です。因果応報(悪い方の意味で)の元に死んでいく彼らは、まさに『死はエンターテイメントになりうる』象徴ではないでしょうか。

いやほんと、騙されたと思って3巻まで読んで。試し読みの範囲では面白さがよくわからないのがほんともったいないのよね。スロースタートすぎるんだよ………
面白くなってくるのは3巻からなのに、物理書籍版は3巻で打ち切り……電子書籍で11巻まで完結してるから!

ワニの死に様に色々申したい人にこそ、ぜひ読んでほしいよ。
(これはダイレクトマーケティングですが、広告料は一銭も貰っていません)